学校 – 日常(II)
この時点では仔細の分からない事件現場を横目に登校。ここで本編に美綴嬢が登場します。慎二の陰湿な下級生イビリ、癇癪の原因は遠坂に振られたことでは、という情報がここで開示。
「遠坂の方から道場に近寄ってくるので、慎二がなにかしでかさないか心配だ」という情報に、「学内マスターはいない」と自信満々だったプロローグの凛を覚えてた勘のいい人は初読でも「あれ、士郎の監視の線はないんだよな。じゃぁ何しに来てるんだ?」なんて思ったかもしれません(ちなみに自分はHF開始まで全く気づきませんでした!)。
昼休みには生徒会室で一成と弁当。当シーンの「衛宮、その唐揚げを一つくれないか。俺の弁当には圧倒的に肉分が不足している」を拾ってくださったのがえみやごはんの唐揚げ回ですね。初出からの時間に思いを馳せると大変感慨深いものがあります。
さて、そのほのぼのから一転、朝の事件現場が殺人事件によるものだったという情報が一成から開示。
一家四人中、助かったのは子供だけらしい。両親と姉は刺殺されたというが、その凶器が包丁やナイフではなく長物だというのが普通じゃない
Fate/stay night 共通ルート2/1
「凶器が長物」から「下手人ランサー? でもなんで?」という話で当時は盛り上がった記憶がありますが、この件はミスリードの線で落ち着いたのだったか。
ここでは、上記の情報から士郎が「想像してしまった」情景の真に迫りようが読み味に危うさを残します。
……想像をしてしまう。
Fate/stay night 共通ルート2/1
深夜、押し入ってきた誰か。不当な暴力。交通事故めいた一方通行の略奪。斬り殺される両親。訳も分からず次の犠牲になった姉。その陰で、家族の血に濡れた子供の姿。
ここ、一成の開示したのは、言ってみれば「赤の他人の一家が通り魔にあった。得物は長物だった」これだけです。それが、士郎とってはただの情報で終わらない。彼にとってそれは痛みを伴う情景として感得される。こういう人物が士郎だということです。
本作における士郎の人物像は(彼自身の主観が全くあてにならないので)こういう描写の端々を頼りに構築していくことになります。奈須先生語録における「ロボット」評は、こういう描写が本編でこれでもかと積み重ねられていることが前提になっている。
というか、士郎の主観はあてにならない。多分このブログこれからも百回くらい同じこと書くんじゃないかと思いますが士郎の主観はあてにならない。だって当シーンからして、この後に続くのは、士郎は自分の受けた衝撃を自覚していないという描写です。脳裏に描かれた情景に、一成がぎょっとするほど「厳しい顔」をしている自分を、士郎は全く自覚しない。
「いや……衛宮が厳しい顔をしていたのでな、少し驚いた。すまん、食事時の話ではなかったな」
Fate/stay night 共通ルート2/1
一成はすまなそうに場を和ます。
……いや、本当にどうというコトもなかったのだが、そんなに厳しい顔をしていたんだろうか、俺。
と、静かに生徒会室のドアがノックされた。
「失礼。柳洞はいるか」
「え? あ、はい。なんですか先生」
(中略)
二人の話し合いは続いていく。
それを眺めながら、なぜか、先ほど聞いた殺人事件のことが頭から離れなかった。
だから「なぜか」じゃないと言うに(まだ共通ルートです)。
放課後 – パイプライン
授業が終わり、下校時刻になる。
Fate/stay night 共通ルート2/1
今日はバイトが入っているので寄り道はできない。
学校に残るコトはせず、まっすぐに隣町に行かなくてはいけないのだが―――
実はこの章タイトル、この三行のためだけについています。
なるほど、ここで士郎がバイトの予定をおして「慎二が遠坂に何かしでかさないか心配して道場を見に行くと決める」のは「パイプライン」なのかとちょっとおもしろく思う次第。